冷え

西洋医学(いわゆる現代医学)では、「冷え」とは体温の低下、不定愁訴、血行不良、自律神経の乱れという程度で病気というとらえ方はされないようです。一方、東洋医学(中医学・漢方)では、冷えは病気の前段階=未病というとらえ方をして、治療の対象となることが多いようです。昨今の病院、クリニックでの診療は漢方治療を併用するところも多くなっており、「冷え」への意識の高まりとともに一昔前よりは注目されだしたように感じます。

体温分布

カラダの表面をサーモグラフィで測定したデータによると、腹部に比べ足先は夏場でも3℃程度低く、冬場になると5℃程度低かったという結果がでていました。さらに冷えを感じる人は、冬場には8℃程度の差が生じていました。上半身のうち、内臓、脳など活発に働く器官には、血流が集まり、代謝が活発なので、その温度は高くなり、また、生じた体温は生命維持のため適切に保持されます。よって、深部(内部)体温に近い脇や口などで測った温度が、通常「体温」として測定されます。一方、手足、特に足先にいくほど、血流は低下しやすく表面温度は低くなると考えられます。

冷えのタイプ

いろいろな分類のしかたがあるようですが、冷える部分ごとに分けてみました(健康管理能力検定の分類を参照しています)
〇手足冷えタイプ
体内で熱を作りだす力が少なく、手足の先まで熱を届けることができない、また血流が滞っていることが考えられます。ダイエットや運動不足などありませんか?運動をして筋肉をつけることで熱量が増え、自律神経も整います。食事もしっかりとりましょう。

〇下半身冷えタイプ 
おしりや太ももが冷えていませんか?運動が少なくデスクワークが多かったり、下半身の筋力が衰えると血行不良につながります。階段昇降、かかとの上げ下げ、スクワットなども試してみましょう。

〇おなか冷えタイプ
あまり自覚症状がないことが多いようですが、おなかをさわると冷たい、おなかをこわしやすいなどありませんか?冷たい飲食に注意し、ハラマキなどでおなかを冷えから守りましょう。

〇全身冷えタイプ
基礎代謝が低下した高齢者に多くみられます。慢性疲労や甲状腺機能低下などによる場合もあるようです。全身が常に冷える方は、「冷え」対策をしっかりとるとともに、冷え以外の他の症状がないかなど注意し、医師の診断を仰ぐことも大切です。

また、それぞれの冷えタイプや、いくつかの冷えタイプがある場合も、調子が悪い場合は、我慢せず医師や漢方医などにも相談してみましょう。

温活・冷えとり

深部体温と抹消(手足)体温には、ある程度の温度差が生じますが、冷えの自覚がある人はその温度差はさらに著しいようです。よって、いかにその温度差を少なくするかが「冷え」対策にもなります。最近では、「温活」「冷えとり」など冷え対策が話題になっています。

〇カラダを動かす
カラダを動かすと、カラダ全体がぽかぽか温まります。これは筋肉の中の血流がよくなり、抹消の温度があがるためです。特に、足は第二の心臓ともいわれ、足(特にふくらはぎ)の筋肉の収縮は、心臓のポンプ機能(血液循環)を補うといわれています。ふくらはぎを意識したストレッチや、自律神経のバランスも整える適度なウォーキングなどもおすすめです。そして、これらを継続することが大切です。
〇温かいものを食べる
冷たいものを食べると、カラダを冷やします。常温のもの、温かいものを選ぶことを意識しましょう。また、食材の中には、カラダを冷やすといわれるもの、温めるといわれるものがあります。からだを冷やすものを避け、温めるものをうまく取り入れてバランスをとってみましょう。
〇半身浴・足湯
冷えやすい脚、下半身をじっくり温めることで、カラダ全体があたたまります。少しぬるめのお湯にゆっくりつかることで、リラックスにもなり疲れもとれます。足湯の機会があれば、利用してみましょう。
〇足もとを温める
靴下の重ね履きや、五本指靴下なども冷え対策になるようです。重ねることで空気の層ができ暖まります。また、素材も保温性のあるもの、吸湿性・放湿性のあるものなど種々開発されています。ふくらはぎをあたためるレッグウォーマーも良いそうです。ご自分にあったものを試してみましょう。一番冷えを感じやすい足先を常にあたため、上半身と下半身の温度差がないようにすることが冷え対策につながります。
〇首まわりを温める
首、手首、足首、胴首(ウエスト)は、大きな血管が通っているので、あたためること、冷やさないことで、全身の血行をよくすることにつながります。スカーフ、ハラマキなどもとりいれてみましょう。

冷えは万病の元!?

「筋力不足」「血行不良」「自律神経の乱れ」などが起因とされる「冷え」、それは様々な不調につながります。冷えのほかに、肩こり、便秘、不眠などありませんか?これらは、冷えの自覚がなくても「冷え」が原因の場合があります。また、「冷え」がもたらす「血行不良・免疫力低下・代謝低下・自律神経の乱れ」などが、さらに「冷え」につながるという悪循環を生じさせます。カラダに「冷え」が生じていることは、自覚していなくてもカラダの不調が進んでいることを意味します。自身でカラダを温めることが十分に機能していないと、カラダの機能も落ち、免疫力も落ちていると考えられます。逆に、カラダが温まると、代謝があがり、免疫力もあがります。東洋医学では「冷えは万病の元」と考えられています。不調と冷えの悪循環を考えるともっともです。

「冷え」を体質や年齢のせいなどと軽く考えず、生活習慣を見直し、「冷えとり」「温活」を活用して、健康なカラダをめざしましょう。