脂肪(脂質)

「脂肪」は、3大栄養素の「炭水化物」「たんぱく質」「脂肪(脂質)」の一つであり、栄養学の観点からは「脂質」とよばれています。脂肪のカロリーは9kcal/gあり、炭水化物、たんぱく質の4kcal/gよりも熱量が大きく、エネルギー源になっています。また、体内ではホルモンや細胞膜などを構成したり、皮下脂肪として蓄えられ、臓器を保護し、体を寒さから守るなど重要な働きをします。

「脂肪酸」は、「脂質」の主要な構成要素で、脂肪酸がさまざまに結びついて脂質を形成します。
脂肪酸は、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)の3種類の原子で構成され、炭素の数や炭素と炭素のつながり方の違いにより、様々な種類があります。

必須脂肪酸

様々な種類の脂肪酸は、食品から摂取されて体内で有効に使われるとともに、体内では他の脂肪酸から再合成して作られます。
この脂肪酸のうち、ヒトの体内で作ることができない脂肪酸を「必須脂肪酸」といいます。必須脂肪酸は、体の組織を正常に機能させるのに必要な成分ですので、食品から摂取が必要なものとなります。必須脂肪酸には、「オメガ3系脂肪酸」と「オメガ6系脂肪酸」があります。※オメガ(=ω)3、6脂肪酸はn3、n6脂肪酸ともいいます。

オメガ3系脂肪酸

オメガ3系脂肪酸には、「α(アルファ)-リノレン酸」と「DHA(ドコサヘキサエン酸)」と「EPA(エイコサペンタエン酸)」があります。

α-リノレン酸

「α-リノレン酸」は、植物に含まれますが、特に種子油に含まれます。
その中で、えごま、あまに、アブラナなどによく含まれ、中でもえごまの種子油には特に多く含まれています。
オメガ3系脂肪酸「α-リノレン酸」が欠乏すると皮膚炎が生じることがあるため、摂取の目安量が定められており、1日2g前後が必要とされています。
また、オメガ3系脂肪酸は、血中の中性脂肪の低下、不整脈の発生防止、血管内皮細胞の機能改善、血栓生成防止などの効果により、生活習慣病予防の効果を示すとされています。
α-リノレン酸の一部は、同じオメガ3系脂肪酸「DHA」・「EPA」に変換されるため、α-リノレン酸をとることで、DHA・EPAの効果も期待されます。

DHA・EPA

「DHA」「EPA」は、「α-リノレン酸」からの生合成(変換)からのみ生成されます。
動物は、植物を食べて、植物に含まれる「α-リノレン酸」を体内で一部を「DHA」「EPA」に変換します。「DHA」「EPA」は、カツオなどの青魚に豊富といわれますが、これは、「α-リノレン酸」を含む植物プランクトンを動物プランクトンが食し、その体内で「DHA」「EPA」に変え、それを小魚が食し、さらにマグロやブリ、カツオなど大型の魚が食すという、「DHA」「EPA」を保有しあう食物連鎖の上に成り立っています。地上でも、植物<草食動物<肉食動物の順に、植物のもつ「α-リノレン酸」を摂りこんでいます。
人間は、主に、えごま油など植物油から直接α-リノレン酸を、もしくは、魚介などからDHA・EPAを摂取することで、必須脂肪酸オメガ3系脂肪酸を得ているのです。

「DHA」は、オメガ3系脂肪酸の中で、血液脳関門を通過できる脂肪酸として、脳や神経細胞のリン脂質を構成し、脳、神経系の機能を正常に保つ働きがあります。「EPA」は、抗血液凝固や中性脂肪低下に役立つとともに、細胞を軟らかく保つ働きがあるとされています。「DHA」と「EPA」が互いの働きを補完しあうことで健やかさの維持に役立つと考えられます。


DHAとEPAの摂取目安量として1日約1gが推奨されており、α-リノレン酸約2gのうちの半分がDHA・EPAで必要とされています。

オメガ6系脂肪酸

オメガ6系脂肪酸は、おもに「リノール酸」で、他にリノール酸から生成される「γ-リノレン酸」「アラキドン酸」があります。

リノール酸

「リノール酸」は、植物に含まれますが、特に種子油に含まれます。コーン油、大豆油などに多く含まれます。
適量のリノール酸は、コレステロールの低下をもたらすといわれています。なお、リノール酸は、いろいろな植物油に多く含まれており、植物油脂を添加している菓子類、パン、レトルト食品などの加工食品にも含まれます。よって、知らず知らずのうちに摂取量が過多になりやすい傾向があります。リノール酸は、一部がγ-リノレン酸→アラキドン酸と生合成されますが、アラキドン酸に炎症やアレルギーを引き起こす作用があるため、リノール酸の摂取過多には注意が必要といわれています。
また、オメガ3系脂肪酸とオメガ6系脂肪酸の双方に関与する酵素があるため、オメガ3系脂肪酸との摂取バランスも大切といわれています。

脂肪酸の種類【補足】

脂肪酸には多くの種類があり、その分類もいくつかあります。その種類と特長を簡単にあげています。
(分類1)飽和か不飽和か(炭素が水素で飽和されているかどうか)
(分類2)炭素Cの鎖の長さ(短鎖、中鎖、長鎖)