ミツバチの生態

ミツバチは、群れを形成して生活します。群れには、1匹の女王バチと数千~数万匹の働きバチ(メス)と数百~数千匹のオスバチ(雄蜂)がいます。女王バチは毎日1,000個とも2,000ともいわれる卵を生涯産み続け、その寿命は3~4年といわれます。働きバチは1か月から数か月の寿命で、女王バチの食事係、卵・幼虫のお世話係、巣作り、花蜜集めと様々な仕事をこなします。女王バチの卵の産み分け(無精卵)によって、オスバチは春の繁殖期に生まれます。1か月で大人になると、巣の外にでかけて他の巣の女王バチと交尾をするのが役割です。

働きバチは、体内から作りだした分泌物ロウ(蜜ロウ)で、六角形の部屋をいくつも作りだし、巣を作りあげます。部屋は、食物の貯蔵エリア、卵を産み付ける子育てエリアなどに分けられます。女王バチは、六角形の部屋に卵を1個ずつ産み付け、働きバチはそのお世話をします。巣が大きくなり増やせるエリアがなくなってくると、新しい女王の群れを作るために、王台という女王バチを育てる部屋が作られ、女王バチ誕生とともに群れが分かれます。これを分蜂といいます。

ミツバチの食事

働きバチは、花蜜を吸い、カラダについた花粉は団子にして巣に持ち帰ります。
<ハチミツ>吸った花蜜は、胃に入れて巣に持ち帰り、吐き出して別のハチに口移ししながら運搬し、ハチミツとして酵素加工・熟成されます。
<花粉>持ちかえった花粉団子は、別のハチがかみ砕いて蓄えられます。
<ローヤルゼリー>巣に蓄えられたハチミツや花粉を、育児係の働きバチが食べて吸収分解し合成され、分泌物としてローヤルゼリーを作りだします。

ローヤルゼリー

女王バチの栄養食

女王バチは誕生から生涯、ローヤルゼリーのみを食べます。繁殖を迎えたら、毎日1,000個とも2,000個ともいわれる卵を産み続けます。働きバチの寿命は1か月ほどですが、女王バチは3~4年の寿命があり、その生命力をもたらすのが 「ローヤルゼリー」なのです。

40種以上の栄養成分をもつローヤルゼリー

炭水化物・タンパク質・脂肪・ビタミン・ミネラルの5大栄養素を含む完全栄養食といわれています。
9種の必須アミノ酸を含みアミノ酸スコア100の食品です。ブドウ糖・果糖など糖質、ローヤルゼリーの特有成分デセン酸、アピシンほか、ビタミン、ミネラル、また神経伝達物質であるアセチルコリン、ホルモン様物質である類パロチンなどを含みます。
※デセン酸は、ローヤルゼリーのみに存在する特有成分で、未解明部分が多いとされていますが、抗菌作用や、女性ホルモンやインスリンに似た働きがあるといわれています。
※アピシンは、ローヤルゼリーに含まれるタンパク質の一種で、未解明部分が多いとされていますが、幼虫の成長に大きく関与することより、長寿、抗老化への働きなどが研究されています。
※類パロチンは、唾液腺ホルモンの一つで、新陳代謝、抗菌などに関与するとされています。

ローヤルゼリーは、王乳と呼ばれる白いクリーム状で、発酵食品のような特徴的な酸味と苦みを有します。栄養豊富なローヤルゼリーは、健康補助食品や化粧品などに利用されています。
歴史的に長く利用されてきており、18世紀に「ローヤルゼリー」と命名されました。その後、ローヤルゼリーの研究が進められました。20世紀半ばには、ローマ教皇が老衰による危篤の際、ローヤルゼリーが投与され回復され、教皇自らミツバチを讃えたことより、全世界に認知されたという逸話があります。これによりさらに研究が進み、滋養、冷え性、肩こり、血圧、骨密度、コレステロール、精神安定などへの効果検証などが進められています。また、その貴重な成分を損なわない加工方法、乾燥工程などの開発、保管・輸送などの工夫も研究されています。

 

蜜と花粉(参考)

花の蜜を食する動物を蜜食動物といい、昆虫、一部の鳥類、コウモリなど一部の哺乳類がいます。このうち大多数は、植物の受粉に寄与しない盗蜜動物といわれます。長い吻や舌で花粉に接せず蜜だけを吸う、あるいは蜜のある部分を狙って食べます。受粉に貢献する動物は、花粉媒介者とよばれ、ミツバチ、クマバチなどのハナバチ類、チョウやガ、アブ、鳥などがあげられます。植物の種類によっても媒介する動物が異なり、植物の形状・生態による動物との駆け引き、戦略があるそうです。花の蜜は、花粉を媒介してもらう為の報酬にあたります。昆虫などによる媒介に頼らず、風(風媒花:スギ・トウモロコシなど裸子植物)や水(水媒花:藻など)など自然に任せる植物もあります。ちなみに、稲は自家受粉植物であり、開花の瞬間にもみの中のおしべとめしべが受粉します。

養蜂(参考)

ミツバチは、花の蜜と花粉を食糧とする昆虫で、日本ではセイヨウミツバチ、ニホンミツバチが飼育されています。ミツバチは、その生態から「蜜を集めてくる」「花粉を媒介する」という人間社会に大きな貢献をしており、古代の壁画の記録などから数千年前には採蜜が始まっていたとされています。また日本では、日本書紀の中に養蜂を試みたというくだりがあり、これが日本での養蜂のはじまりといわれています。

養蜂には、「採蜜」目的と「花粉交配」目的の2種類があります。両方を兼ねることもあります。果物、野菜の栽培農家が、効率的に受粉をすすめるために、受粉の季節にハチを巣ごとレンタルまたは購入します。とくにイチゴ、メロンなどのハウス栽培には欠かせない存在です。

ミツバチ飼育戸数は、全国で1万弱あります。蜜源植物は、みかん、りんご、アカシア、れんげが主なものです(植栽面積の順)。しかし、植栽面積は昭和60年と比較して平成30年には1/3に減少しており、国内のハチミツ生産量も40%に減少しています。
ハチミツの国内自給率は、平成30年度は6%(昭和60年は20.5%)で、ほとんどを輸入にたよっています。輸入相手国は、中国が71%、アルゼンチン11%、カナダ6%となっています。<データは令和元年農林水産省HPより>

なお、中国は2000年頃よりハチミツの生産量世界一となっており、広大で豊かな自然、蜜源も豊富で、季節の訪れに地域差が大きく養蜂期間が長期可能であることなどより、養蜂大国の一つといわれています。また、中国では古くから食用及び薬用としてハチミツを重宝する文化があります。近年は、中国国内でハチミツの規制が強化され、同時に分析技術の向上とあわせて安全性が高まり、国際市場でのハチミツの25%、ローヤルゼリーの90%を生産しているそうです。