乳酸菌

乳酸菌は、糖類を分解して乳酸を生成する細菌の総称で、ヨーグルトやチーズ、漬物などの発酵食品に多く含まれています。乳酸菌は動物の腸内など体内に常在菌として存在しており、腸内では善玉菌として腸内環境を正常に保つ役割をしています。

ビフィズス菌は、糖類を分解して乳酸と酢酸を生成する細菌で、広義には乳酸菌の仲間とされますが、菌の種類としては異なる種となります。ビフィズス菌は、酸素を嫌う性質があり動物の腸内にのみ(おもに大腸)存在して、腸内環境を正常に保つ役割をしています。

乳酸菌の分類と種類

乳酸菌は、わかっているもので350種類ほどあるといわれています。その形状から、細長い棒状の「乳酸桿菌(かんきん)」、丸い球状の「乳酸球菌」に分けられます。また、乳酸のみを生成するもの(ホモ型)、乳酸+アルコールやビタミンを生成するもの(ヘテロ型)という分類もあります。
ラクトバチルス菌(乳酸桿菌)の種類であるアシドフィルス菌、カゼイ菌、カゼリ菌、ブルガリクス菌。ラクトコッカス菌(乳酸球菌)の種類であるラクティス菌、クレモリス菌。ストレプスコッカス菌(乳酸球菌)の種類に、サーモフィルス菌などがあり、特性にあわせてヨーグルトやバター、チーズなどに使われています。

ビフィズス菌は、30種類ほどがわかっており、形状は、Y字またはV字など二股になっているのが特徴です。このうち、ヒトの大腸には5種類のビフィズス菌が生息しているといわれています。
ビフィドバクテリウム菌の種類で、ビフィダスム菌、ロンガム菌などあり、乳飲料などに使われています。

有胞子性乳酸菌について

様々な乳酸菌が研究されている中、有胞子性乳酸菌が注目されています。
有胞子性乳酸菌と呼ばれるものは、胞子を形成する乳酸菌のことをいいます。一般的な乳酸菌は熱や酸に弱く、摂取しても腸に到達するまでに胃酸や胆汁などで大部分が死滅してしまいます。有胞子性乳酸菌は、熱と酸に強い胞子を形成して、胃酸などで死滅せずに生きたまま腸に届き、腸内の適度な温度と水分で発芽し増殖します。有胞子乳酸菌は乳酸を生成する能力が高く、また腸内に留まる力も強い(一週間程腸内に定着し、その後排泄される)ので、一般的な乳酸菌を摂取するよりも高い効果が得られるといわれています。

腸内フローラ(腸内細菌)

腸内には1000種類以上、100兆個以上ともいわれる細菌が常在細菌としてすみついており、その重量は1.5~2㎏になるといわれています。腸の中を開くとテニスコート一面分になるといい、その中に無数に棲みつく細菌が菌種ごとに群れをなし、その様子が、お花畑(フローラ)のようだということから「腸内フローラ」と呼ばれています。
この無数の腸内フローラの中で、善玉菌(乳酸菌、ビフィズス菌等)と悪玉菌(ウェルシュ菌、ブドウ球菌、大腸菌等)が常に勢力範囲を争っています。この他、日和見菌とよばれる善玉とも悪玉ともつかない菌が多数存在します。健康な人の腸内では、悪玉菌より善玉菌が優勢になっており、善玉菌が糖類から生成する乳酸などの有機酸によって腸内を弱酸性に保ち、酸性に弱い悪玉菌の活動を抑制しています。逆に食生活の乱れやストレスなどによって悪玉菌が優勢になると腸内での腐敗物質の産生が盛んになり、アンモニア、フェノール、インドール等の有害物質が増えます。これらが、腸管から吸収され、各器官に影響を及ぼし、老化や生活習慣病の原因に繋がります。
善玉菌である乳酸菌は、乳酸を生成することによって腸内を弱酸性に保ち、悪玉菌の増殖と有害物質の生成を抑制します。また、腸内が弱酸性に保たれることにより、腸の蠕動(ぜんどう)運動も促進され、有害物質を速やかに便として排出しやすくなります。
悪玉菌は、日頃から少ない悪玉菌が住みついていることから、抵抗する力をつけ、強力な悪玉菌がはいってきた時に抵抗力を発揮します。特に、悪玉菌のうち大腸菌は、ビタミンを合成する働きももっています。また、酸素を食べる大腸菌は、酸素を嫌う乳酸菌にとっては共生関係といえます。
腸内フローラの分布割合は、善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7のバランスが良好といわれています。

腸内細菌の驚くべき働き

・病原体の侵入を防ぎ排除する。(善玉菌の働き)
・食物繊維を消化し短鎖脂肪酸(酢酸など)を産生し、エネルギーに変える。
・ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンK、葉酸、パントテン酸、ビオチンなどのビタミン類の生成をする。
・ドーパミンやセロトニンを合成する。自律神経を司る脳内物質「ドーパミン」や「セロトニン」は、食べ物から摂ったアミノ酸を原料に腸の中で合成されます。その合成に深く関与しているのが、腸の中に無数に存在する「腸内細菌」といわれます。また、腸は独自の自律神経の信号を脳に送るなど「腸は第二の脳」ともいわれ、腸と脳は密接に関係しています。
・腸内の善玉菌は、カラダの免疫力を高めるといい、腸内細菌と腸粘膜細胞とでカラダの免疫力の多くを作りだしているといわれています。

善玉菌のうちビフィズス菌が99.9%!

実は、大腸の腸内フローラで活躍する善玉菌の大部分はビフィズス菌が99.9%を占め、生菌数は1兆~10兆個ともいわれています。乳酸菌(乳酸球菌、乳酸桿菌)は、わずか0.1%で生菌数は1億~1,000億個といわれています。
そもそもビフィズス菌は、酸素のない動物の腸内(大腸)でしか生息できない菌で、離乳期前の赤ちゃんは母乳栄養によりビフィズス菌数は最高に達し、離乳後から徐々に減っていくものの高水準を保つが、幼児期より減少していくというデータもあります。
乳酸菌(乳酸球菌、乳酸桿菌)は、酸素があっても生息できるので、大腸に近い小腸に多く存在するようです。

プロバイオティクス・プレバイオティクス・バイオジェニックス

以上のことより、腸内細菌の善玉菌は大半がビフィズス菌であり、ビフィズス菌を摂取した方がよいと思われますが、酸や加熱に弱いビフィズス菌を体内に取り込むことは難しいとされ、生きて腸まで届ける研究・開発が多くなされています。生きて腸まで届く菌を「プロバイオティクス(生きた菌)」といいます。

また、体内にあるビフィズス菌を育てる発想から、ビフィズス菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖などを「プレバイオティクス(エサ)」と考え、研究が進められています。

さらに、プロバイオティクス(生きた菌)、プレバイオティクス(エサ)だけでなく、死んだ乳酸菌であっても、その成分や、代謝、分泌、産生した成分も含めて腸内環境を整えるとされ、「バイオジェニックス(死んだ菌)」の有効性の研究も進められています。これにより、ヨーグルトや発酵食品などの乳酸菌が腸内環境に有用だといわれています。

腸内細菌の大切さ

腸内細菌は、出生直後から母乳、唾液などを介して、善玉菌、悪玉菌ともに棲みつき始め、さまざまな食事を摂ることで、腸内フローラの様相が変わっていきます。
細菌類によって、あらゆるカラダの機能が保たれていることがわかります。棲みついた細菌類の種類は日々の食事で決まってきます。良いといわれる菌を摂取しても、棲みつくに至るまでは時間がかかるといわれます。半面、悪い菌に影響を受けるのは早いので、善玉菌優勢の腸内環境を保つことが大切です。また、腸の健康は、カラダの免疫力、自律神経にも影響を及ぼすことからも、腸内細菌をいかに良い状態で保つかは、私たちの健康にとって重要といえます。