テアニン

テアニンは、お茶に含まれるアミノ酸の一種で、お茶のうま味成分です。玉露などの高級なお茶に多く含まれます。テアニンは植物の中でもチャノキのほかごくわずかな品種にしか存在しないといわれる希少なアミノ酸です。

特徴

テアニンは経口摂取後、腸管から吸収され、血液、肝臓に取り込まれ、血液脳関門を通過し、脳内に到達します。血液脳関門とは、脳細胞への物質の取り込みを調節する機構で、特定の物質しか通過できません(下記「血液脳関門」参照)。テアニンが脳内に入ると、神経伝達物質のドーパミンやセロトニンの濃度を変化させることによって、興奮を鎮めて緊張を和らげる働きと、心身をリラックスさせる効果がでると考えられています。

期待される効果

心身のリラックス効果

お茶を飲むと一息ついたような感覚や心が落ち着く感覚がおきることがありますが、これはテアニンによるリラックス効果であると言われています。テアニンの摂取後、40~50分程でリラックスの指標であるα波が発生するという実験データも出ています。他にも脳の興奮を抑えて神経を沈静化させ、精神的なストレスを抑制する効果が確認されています。
なお、お茶には大量のカフェインが含まれていますが、お茶を飲んでもそれ程神経が高ぶらないのは、カフェインの興奮作用をテアニンが鎮静化するためと考えられています。

集中力向上への期待

試験やスポーツ競技などでは必要以上に緊張し、実力を発揮できないケースもあります。テアニンの摂取により、緊張を和らげ、集中力が増すことが期待され、結果として成績やパフォーマンスのアップにつながると考えられます。

月経前症候群、更年期障害改善への期待

女性の月経前症候群(PMS)、更年期障害において、国内外での臨床試験で改善に効果的とされており、これらの愁訴、症状の緩和が期待されます。

テアニンとカテキン

お茶の木は、ツバキ科のチャノキという品種で、日本をはじめアジアで多く栽培されています。
日本では、新芽の芽先2~3枚の葉っぱを摘み取って、主に緑茶として利用します。収穫・加工の仕方によって、抹茶、玉露、煎茶、ほうじ茶などがあります。アジア諸国では、葉っぱを軽く発酵させたウーロン茶、完全に発酵させた紅茶、麹菌などを使って発酵させたプーアル茶などがあり、お茶は世界中で豊かな飲用茶文化をつくりだしています。

アミノ酸「テアニン(うま味成分)」は、チャノキの根で生成され、幹をとおって葉に蓄えられます。このテアニンが、日光を浴びると「カテキン(渋味成分)」に変化します。この為、テアニンが豊富な玉露は、新芽が出始めたら、よしずやわら、黒い寒冷紗などで日光を遮断し、カテキンへの変化を抑制します。テアニンのうま味の濃い玉露は、このように手間をかけられ最高級のお茶になります。

なお、このカテキンは、緑茶の苦み、渋味成分となりますが、強い抗酸化作用をもつポリフェノールの一種です。生活習慣病や肥満を予防する効果が期待され、高濃度カテキン入りの飲料や健康食品などにも利用されています。また、殺菌・抗菌作用があるとされ、除菌剤などにも応用されています。

血液脳関門(参考)

血液脳関門(Blood Brain Barrier=BBB)は、脳細胞に酸素と栄養を届ける毛細血管が強固なバリア機能をもったものです。通常の臓器では、血管と組織で物質のやりとりが行われ、酸素、栄養、化学物質、重金属など有益、有害なものも取り込まれます。薬が作用するのもこのためです。しかし、脳細胞にむかう毛細血管には、血管壁に厳しく選別するフィルターのような細胞がついており、非常に分子が小さく特定物質しか通過できないしくみになっており、大切な脳を守っています。しかしながら、アルコール、ニコチン、カフェインなどは通過できてしまい脳内に影響を及ぼします。ドラッグ、覚醒剤などの有害物質も通過してしまい、快楽をもたらし中毒化させます。薬では抗うつ薬などは通過できるよう開発されています。
同様の選別機能をもつものとして、血液脳脊髄液関門、血液網膜関門、血液胎盤関門などがあります。