ミネラル

現在、地球上には118種類の元素が存在しているとされています。(元素とは、水素H、炭素Cなど、物質を構成する基本的な成分です。)このうち、ヒトのカラダを構成する元素は30種類以上といわれます。これら元素のうち、ヒトのカラダを構成する主要な4元素(酸素、炭素、水素、窒素)以外のものを総称して「ミネラル」(または無機質)といいます。

ミネラルは、3大栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂肪)に、「ビタミン」、「ミネラル」を加えて5大栄養素といわれるように、私たちに不可欠な重要な栄養素の一つです。

体組成

1.水分と有機質で96%
主要4元素(酸素、炭素、水素、窒素)で構成される水分と有機質で、人体の96%を占めます。人体に存在する水分は、年齢により変化がありますが60%前後です。有機質とは、炭素と結合した物質で、タンパク質、脂質、糖質、核酸などを構成しています。

2.無機質4%(ミネラル)

人体のミネラル分は、カラダから水分と有機質を除いた、残りの4%程度となります。(例:体重50kgあたり約2kg)

このミネラル分のうち、カルシウムが1~2%、リンが1%前後といわれ、これらでミネラルの半分をしめています。カルシウムとリンは、歯や骨などカラダの組織を構成する成分となっています。

ミネラルの分類

ミネラルは体内で合成できないため食物として摂る必要があります。「日本人の食事摂取基準(厚生労働省2020年版)」では、13元素について摂取基準を設定しており、一般的に「必須ミネラル」とよばれています。必須ミネラルのうち、必要な摂取量により多量ミネラル、微量ミネラルと分類されています。必須ミネラルは、イオウ、塩素、コバルトをいれて16種類とすることもあります。なお、「塩素」は、塩化ナトリウム(NaCl)のように、主に塩化イオンの形をとるものです。必要不可欠で大切な働きはあるものの、通常は欠乏することはないため摂取基準の設けられていないミネラルです。

①多量ミネラル(主要ミネラルともいいます)
<一日の摂取量が多量に必要なもの:概ね100mg以上>
カルシウム
リン
カリウム
ナトリウム
マグネシウム

②微量ミネラル
<一日の摂取量が少量必要なもの:概ね100mg未満のもの>

亜鉛
マンガン

セレン
ヨウ素
モリブデン
クロム

 

ミネラルの主な役割

主な役割として3つに分けられ、生体維持の重要な役割を担っています。

①カラダをつくる材料として働く・・・骨、歯などの身体の構成成分になる。たんぱく質や脂質などの構成成分となる。

②生体機能の調整を行う・・・体液濃度を調整する。神経・筋肉の興奮を調整する。代謝に関与。

③酵素の構成成分となる(酵素は体内で必要な化学反応を行うため、生命維持に必須です)

 

ミネラルの役割と含む食品

不足しがちなミネラル

◇カルシウム不足:カルシウム、マグネシウム、亜鉛については、1日の摂取目安量を下回りがちです。とくに、カルシウムは、体内存在量が最も多いミネラルですが、その必要摂取量は全年齢で不足がちです。積極的に小魚、海藻など日々の食事からの摂取を意識する必要があります。

◇食生活の変化:外食、ファーストフード、コンビニ食品、インスタント食品などで済ますことにより、栄養バランスが崩れ、ミネラル不足も生じています。また、このような食品には、食塩相当量が多く、ナトリウムの摂取過剰になりがちです。また、食品添加物として多用されているリン酸塩により、リンの過剰摂取も注意が必要です。

◇精製された食品:玄米→白米、天然塩→精製塩(食塩)、黒砂糖→精製糖(上白糖)、全粉粒→小麦粉など、精製されることにより、食品が本来もつミネラル分が取り除かれます。

◇旬の野菜:野菜に含まれるミネラルやビタミンなどの栄養は、旬のものがやはり最高になるといわれます。技術改良により季節を問わず手に入る野菜も多くなっていますが、旬をはずした野菜や促成栽培された野菜は栄養価も低くなる傾向があります。

◇土壌や栽培方法の変化:野菜を育てる土壌は、この100年間で大きく変化しました。たい肥の利用から化学肥料に変わり、土壌はあきらかに変化しています。日本食品標準成分表のデータを比較しても、栄養素が減少したものが見受けられます。(成分分析技術の差等により一概には言えないという考えもあります)

ミネラルバランス

ミネラル各種は、吸収や働きにおいて互いに影響をあたえ合うことがあるため、バランスよく摂ることが求められます。不足した場合は欠乏症やさまざまな不調が発生しますが、摂りすぎた場合にも過剰症や中毒を起こすものがあります。

協調しあって働くブラザーイオン

カラダを組織する細胞の内外に「ナトリウムとカリウム」「マグネシムとカルシウム」がバランスよく存在することが機能維持に大切だといわれます。これらのペアをブラザーイオンといいます。

◇ナトリウムとカリウム
ナトリウムはカリウムとともに体内の水分バランスや細胞外液の浸透圧を維持しているほか、筋肉の収縮、神経の情報伝達、栄養素の吸収・輸送、血圧の調節などにも関与しています。ナトリウムの過剰摂取は、高血圧やむくみ、様々な生活習慣病の原因になるといわれますが、カリウムにはナトリウムを排出する働きがあります。よって、過剰摂取になりがちなナトリウムに対して、カリウムを意識して摂取することも大切といえます。

◇カルシウムとマグネシウム
筋肉の収縮には、カルシウムとマグネシウムが連携して働いています。どちらもバランスよく摂取することが大切で、その摂取割合は、カルシウム:マグネシウム=2:1程度が推奨されています。
※マグネシムは、全ての細胞に存在し300種類もの酵素に関与するといわれ、必要不可欠なミネラルです。海藻類に多く含まれていますが、大豆、落花生、アーモンド、胡麻などにも含まれます。

ミネラルの相乗作用と拮抗作用

それぞれのミネラルが相乗してよい働きをする場合もあれば、阻害する働きがでる場合あります。

◇相乗作用(相乗して働く)
・鉄と銅(両方をバランスよく摂取すると、鉄のヘモグロビン合成が促進される)

◇拮抗作用(阻害する働き)
・カルシウムと亜鉛(カルシウムばかり摂取すると腸内で亜鉛の吸収を阻害する→亜鉛不足→貧血、イライラ)
・鉄と銅(鉄ばかり摂取すると腸内で銅の吸収を阻害する→貧血、骨の形成不足)
・リンとカルシウム(リンの過剰摂取→カルシウムの排出が促進カルシウム不足)

 

ミネラルの吸収

カラダを作る、血液を作る、神経・筋肉の機能調整、代謝に関与など、生きていくための機能を維持するには、種々のミネラルが欠かせないことがわかります。それぞれのミネラルは、働きが異なるため、特に必須ミネラルとしてあげられているものは、過不足なく摂取する必要があります。そのためには、肉、魚、豆、乳製品、野菜、果物などバランスよく摂取することが大切です。

口から摂取されたミネラルは、胃酸でイオン化され、小腸・大腸で吸収されます。しかしながら、摂取したミネラルの吸収率は100%ではありません。吸収率のよいナトリウムは90%ともいわれますが、カルシウムでは20~40%、微量ミネラルにおいては、10~30%といわれています。
ミネラルの吸収をよくするには、
①胃酸が十分に働くこと
②小腸・大腸の腸内環境が整えられていること
で、より良い状態でミネラル分は吸収され、カラダの中で働くことができます。

ビタミン類は、一時的にたくさん摂取した場合は、余剰分は排出されるといわれますが(長期的や大量摂取などを除く)、ミネラルは、まず確実に吸収されることが必要です。たくさん摂取しても体内に吸収されなければ役に立ちません。また、特定のミネラル摂取に偏ると、他のミネラルの吸収が阻害される弊害もあります。

バランスのとれた食事を通じて、種々のミネラルの必要量を効率よく摂り入れることが大切といえます。